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The New Adventures of Pinocchio
     
ピノキオ/ニュー・アドベンチャー

アメリカ映画 (1999)

ガブリエル・トムソン(Gabriel Thomson)がピノキオを演じる子供向き映画。1996年のアメリカ映画『ピノキオ(The Adventures of Pinocchio)』の続編。ただし、製作者も監督もすべて替わり、同じなのは、ゼペット役のマーティン・ランドーと悪役のウド・キアだけ。IMDbによれば製作の筆頭国はルクセンブルクになっているが、映画の最初に現れる「Fries Film Group」はアメリカの会社だし、話しているのも英語なので、ここではアメリカ映画とみなす。1996年の正編は、原作にほぼ準じた内容で、映画の最後に人間の子供なるまでずっとCGの木の人形が主人公。しかし、この後編は自由な発想で作られ、一時木の人形に戻るが、ほとんどは人間のピノキオが主人公。映画そのものの評価は高いとは言えないし、内容も如何にも子供向きだが、これがガブリエルの初主演作であり、かつ、最初から最後まで美少年ぶりを見せてくれる。それだけで十分に観る価値がある。

ピノキオと、かつてロバにされた悪友ランプウィックは、以前の経験に懲りず、学校をさぼって、村に来たサーカスを見に行く。そのサーカスは、以前、人形だったピノキオをさらった悪徳興行師ロレンヅィーニの未亡人と称する人物が率いていて、手下のフェリネットとヴォルペが、猫人間と狐人間にされて仕えている〔こんな偶然の一致は、あるはずがないのだが…〕。手伝いをする約束をすっぽかし、遅く帰宅したピノキオを待っていたのは、疲労で寝込んだ父ゼペット。ピノキオは、父を元気にしようと、サーカスで見た霊薬を売ってもらおうと再びサーカスに向かう。ピノキオを見た団長は、ピノキオを人形に戻して一儲けしようと、10年間サーカスでタダ働きするという契約にサインさせ、霊薬を渡す。ピノキオは、元気になる霊薬だと思い込んでいたので、さっそく寝ている父の口に注ぎ込む。しかし、朝起きると、父は木の人形になっていた! 人形になったピノキオをもらおうと家を訪れた団長は、この逆転に驚いたものの、如何にも悪者らしく、2人ともサーカスにさらっていく。そして、父は「生きた人形」として、ピノキオはその相手役として舞台に立たせる。このコンビは、たちまち一座の花形に。父を人形にしてしまったことに責任を感じているピノキオは、団長の脅しに屈し、父を人間に戻す代わりに、霊薬を飲んで人形に戻るが、父は人間に戻してもらえない。怒ったピノキオは、守り手のコオロギの力を借りて、青の妖精の教えてくれたヒントを解こうと、自分の生まれた松の森に戻る。そこに待っていたのは意外な結末だった…

撮影時12歳くらいのガブリエル・トムソンは、典型的なイギリスのハンサム・ボーイ。演技も上手いので、失敗作が初主演というのは可哀想だ。ガブリエルは、本作の1本前に出演したBBCのTV映画『大いなる遺産』のピップ役の方が有名だ〔この時も、りりしさが際立っていた〕。偶然だが、ピップの相手役エステラを演じていたジェンマ・グレゴリーが、本作では青の妖精を演じている。


あらすじ

夜遅くまで操り人形作りに打ち込んでいた父。朝が来てもまだ眠っている。ピノキオは、2人分の朝食(ジャガイモのバター炒め?)をテーブルに置き、お腹が空いたので食べながら、「パパ、朝食だよ。冷めちゃうよ」と声をかける。起きる気配がないので、肩を揺すって「ねえ、パパ、起きてよ」と起こす。そうやく目が覚めた父に、ピノキオは、「そのうち、人形に殺されちゃうよ」と働き過ぎを諌める(1枚目の写真)。「今年は、すごいチャンスなんだぞ、ピノキオ。もし 人形フェスティバルで優勝したら 王室ご用達だ。そのために、こうして頑張ってきたんだからな」。「もう 蒸気機関の時代だよ」〔映画は1890年の設定〕。「人生とは、最小の努力で沢山お金を稼ぐことさ。逆行してるよ」。何とも殺伐とした返事だ。19世紀末に、イタリアの片田舎の子供が発する言葉とはとても思えない。父:「違うぞ、人生とは愛することだ。わしは人形を愛してるし、お前も愛しとる」。そして、「さあ 学校に行く用意をするんだ」と言う。「時間の浪費だよ。本なんて役に立たない。僕たち、どんな冒険だって できるんだ。事業を起こせば、お金持ちになれる」。「だがな、この人形が払ってくれてるんだぞ… 食事や、住む場所や、お前の着てる上等の服を」。「でも、もっと楽な方法があるよ。全部 機械化すればいいんだ」(2枚目の写真)。そこに、悪友のランプウィックが迎えに来る。以前、ロバにされた子だ。「ピノキオ、授業が終わったらすぐ帰宅して、わしを手伝ってくれ。いいな?」と言う父に、「分かったよ、パパ」と抱き付く(3枚目の写真)。このピノキオには、以前、木の人形だった面影は全くない。
  
  
  

ランプウィックと一緒に家を出たピノキオ。学校に向かうハズが、いつの間にか足はサーカスに向いている。その途中での会話も、父との会話の延長戦上にある。「物事を 違った目で見るんだ、ランプウィック。成功しそうな事業に投資すればいい。それで世界に打って出る」(1枚目の写真)。金貨が好きで、地中に埋めれば倍になるからと騙された前作のピノキオとは全く違う。ランプウィックは、単純なので、「その『事業』って何?」と訊く。「お金持ちになるのに 必要なもの」。単純明快な答えだ。その後で、サーカスの客寄せに、団長のマダム・フランボウが、片方の足が短い男を霊薬で治療してみせるシーンがある。薬で両足の長さが揃って喜ぶ男を前に、マダムは聴衆に宣伝する。「このマダム・フランボウの奇跡の霊薬を使えば、何でも できますよ… 特に、不可能なことが!」。それを聞いて大喜びするピノキオたち(2枚目の写真)。マダムは、さらに続ける。「皆さんの目の前で、奇跡は起きました。このマダム・フランボウの霊薬でね。これは『若さの泉』ですよ!」。飛ぶように売れる薬。さっき男が飲んだものとは、瓶が違っている〔ここが、インチキ〕。ピノキオは、「さっき話してたのは、この事さ。事業だよ。その完璧な成功例だね。霊薬に… 巧い宣伝」(3枚目の写真)。
  
  
  

2人は、寄り道をしたことで、学校に遅刻してしまったことに気付く。どうせ今から行っても遅刻で責められるなら、いっそサーカスを見に行こうと決め、教科書を売って入場券を買う。このあたりの「悪い子ぶり」は初代ピノキオと変わらない。2人が中に入って行くと、呼び込みのコビトが、「世界中から集めた恐ろしい化け物の一大コレクションだよ。ネプチューンの深淵に生息する説明のし様がないほど奇妙な生き物が、みんなここにいるよ。どれも本物だ。しかも生きてる!」と煽る(1枚目の写真)。因みにこのコビト氏、ハリー・ポッター・シリーズのグリップフック役とフリットウィック役で知られている人だ。テントの中に入ると、うたい文句とは大違いのインチキの山。凍った人間を、真剣な目で見るピノキオ(2枚目の写真)。大きな水槽の中には、人間のような顔をした変な魚が泳いでいる。マダムの魔法で魚に変えられた子供達だ。「助けて」と言っているのだが、水の中なので2人には聞こえない。だから、ピノキオは楽しそうに見ている(3枚目の写真)。魚の口パクを見たランプウィックが、「あれ何だろう?」と言ったけれど、「必死そうだね」と答えただけ。
  
  
  

ピノキオがテントの中で1人になった時、青い光とともに、目の前に不思議なものが現れる。ボールを突いている女の子だ(1枚目の写真)。実はこれ、かつてピノキオを人形から人間の子供に変えた青い妖精だ。この妖精は、ピノキオにしか姿が見えない。そして、彼女は、ピノキオに、謎のような言葉を投げかける。「クリームに魔法をかけ、夢を見せる。奇抜な扮装から驚きが生まれる」。ピノキオにはさっぱり意味が分からない(2枚目の写真)。因みに、観客にも分からない。その時、ランプウィックが、「なぜ、何もない場所を見てる?」と訊く。彼には妖精が見えないからだ。ここに、客寄せのコビトが現れ、「いいもの、見せてやる」と2人に話しかける。「何なの?」。「『導き』と『守り』だ」。「どこへ行くの?」「何から守るの?」(3枚目の写真)。「分かるさ。木の頭でなきゃな」。実は、このコビト、ピノキオを守るコオロギの変身した姿。このペンダントは、後でピノキオを助けてくれる。
  
  
  

ピノキオは、サーカスで遊んでいたので、帰宅時間が大幅に遅れてしまった。父から手伝いを頼まれていたので、助けてもらおうと、ランプウィックに同行してもらう。家では、父が過労で倒れ、医者が診察に来ていた。「軽度の疲労だな。働き過ぎだよ」。「僕が悪いでんです。手伝うべきだったのに」。「心配は要らんよ。1週間ほど寝てれば良くなるだろう」。「1週間? それじゃ人形フェスティバルに間に合わないよ」。「今は、ゼペットを動かしちゃいかん。『若さの泉』でもあれば別だが、あれば教えて欲しいくらいだ」。この言葉にピンときたピノキオ。さっそくサーカスに出向き、マダムに霊薬を売ってもらおうとする。それを知ったフェリネットとヴォルペ(猫と狐)は、ピノキオをマダムに差し出せば、人間に戻してもらえると「皮算用」をして、マダムにピノキオの来訪を告げる。マダムは、ピノキオを人形に戻してサーカスの目玉にしようと目論み、如何にも知らない顔をして、ピノキオを部屋に呼び入れる。「さてさて、どなたかしら?」。「僕はピノキオ、こっちは友達のランプウィックです」(1枚目の写真)。「ピノキオ君と、ランプウィック君は、何が欲しいのかな?」。ピノキオ:「霊薬を1本買いたいんです」。ランプウィック:「僕も」。「それで、お金はあるの?」。ピノキオは、教科書を売り、入場券を買った残りの小銭を見せる。「それ、冗談のつもり?」。「残りは、働いて返します」。「どこかで見たような… 興行に出たことはあるの?」。「まあ、ちょっと…」と口ごもるピノキオ。ランプウィックが、「前は、人形だった」とバラしてしまう(2枚目の写真)。ピノキオも仕返しに「僕の友達は、ロバだった」。「あたしをバカにする気?」。「いいえ、本当です」。マダムは、2人から爪と髪の毛を採取すると、部屋に籠って霊薬を作る。薬が完成すると2人を呼び、「サーカスで働くなら、契約にサインしてもらわないと。学校は やめないとね。プロになってもらうから」と告げる。ランプウィックは、「そんな仕事がしたかったんだ」と前向きだ(3枚目の写真)。「君たちには、霊薬の代金を払い終えるまで働いてもらうわよ。もちろん、霊薬は本物ですよ」。これがあくどい罠だとも知らずに霊薬を受け取る2人。ピノキオが渡された霊薬には、人間を木の人形に変える効能、ランプウィックが渡された霊薬には、人間を海ロバ(sea donkey)に変える効能がある。
  
  
  

家に戻ったピノキオ。「『若さの泉』の水かどうか分からないけど、試す価値はあるよ」と言いながら、木の匙に薬を注ぎ、寝ている父の口に入れる。さらに、「ちゃんと効くように」と、瓶から直接口に注ぐ(1枚目の写真)。そして、「残りは、明日にしょうね」と言い、父のそばのイスに座ったまま眠る。朝になって、父の元気そうな歌声で目が覚めるピノキオ。父は動きまわっているが、ピノキオの位置からは姿が見えない。父が、テーブルに身を乗り出して「お早う、朝食の時間にぴったりだな」と言った時、初めて顔が見える(2枚目の写真)。木の人形だ! 驚きのあまり凍りつくピノキオ(3枚目の写真)。「一体、どうした?」。「どうしたって? 別に…」。「顔色が悪いぞ」。「僕… 元気だよ。気分はどう?」。「絶好調さ。丸太のように眠ってた(I slept like a log)」〔普通なら、「ぐっすり眠ってた」と訳すべきだが、木の人形なので、敢えて直訳した〕。ここで、ようやく父はピノキオが大きいことに気付く。「変だな。お前、一晩で背が伸びたのか? それとも、わしが縮んだのか」。ピノキオは、「こんなこと、起きるはずない」と肩をつねってみるが痛い。厳しい現実なのだ。
  
  
  

ここで、父が「クリームを取ってくれ。そこの調理台にある」とピノキオに頼む。ところが、クリームの入った赤銅製の鍋はピカピカで鏡のように顔が写る。渡すのをためらうピノキオ。「おいおい、ピノキオ。シリアルが 冷めちまうじゃないか」。「僕が やるよ」(1枚目の写真)。「寄こしなさい」。鍋を奪い合う2人。そして、父は、鍋に映った自分の木の顔を見てしまう。「ピノキオ、お前… 何をした? まさか… 夢を見てるに違いない」。どうしようかと、焦るピノキオ(2枚目の写真)。ピノキオは、霊薬の瓶を手に取り、「ダマしたな」とつぶやく。父は、「わしは死んだに違いない。これは、わしへの罰だ。それとも、褒美かな?」と言いつつ、ピノキオが手にした瓶を見る。「それは、何だ?」。「奇跡の霊薬。昨日、パパに飲ませたんだ」。「サーカスの安い気付け薬でか? いやいや、そんなことは あり得ん」。しかし、そこで、鏡に写った自分の全身像に気付く。「人形だ。わしは… 人形なんだ」。呆然とする父。ピノキオは泣きながら「パパ、ごめんなさい、パパ」と言って、人形になった父に抱き付く(3枚目の写真)。「私が息子で、お前が父親みたいだな」
  
  
  

そこに、玄関のドアをノックする音が。「あたしだよ、可愛い坊や」。ピノキオがドア開けると、マダムが入って来る。そして、ピノキオを見つけると、急に口調が乱暴になり、「このクソガキ! 霊薬を飲まなかったね?」とののしる。そこに、父が姿を見せる。「これは、お前がやったのか?」。予想外だったので、「ゼペット!」とびっくりするマダム。「あんた、さっそうとした仕上げの木目調ね」。如何にも知ったような口ぶりに、「どこかで会ったかね?」と父。「自己紹介させていただくわ。あたしはジーナ・カテリーニ・モンゼンラート・ロレンヅィーニ」。「ロレンヅィーニ? クジラになった人形使いの?」。「人形使いの名人よ。残虐な目に遭い、運命に翻弄された人。あたしは、彼の未亡人」。ここで、急にとげとげしくなり、「お前が殺したのよ。お前たち2人で」。さらに、ピノキオに「このバカ。お前が飲むハズだったのに」と言い、昨夜の契約書を取り出し、「お前、契約書にサインしたわね、覚えてる?」と言う。「あたしのサーカスで働くのよ、人形として… 10年間」(1枚目の写真)。「パパを元に戻してよ! お願い。何でもするから」とすがるように頼むピノキオ(2枚目の写真)。しかし、マダムは、「契約に従い、お前の替わりに、ゼペットに化け物ショーに出てもらう」と宣告する。「そんな!」。マダムは一緒に連れて来た団員に、「新しいお客様を、宿泊施設へお連れして」と皮肉っぽく言い、2人をサーカスへと連れ去る。ワラの敷かれた檻の中に放り込まれた2人。入口に頑丈な錠が掛けられる。父:「自分を責めるんじゃない。あの女は、死んだ夫と同じで、怪物なんだ」。ピノキオ:「ランプウィックと学校に行ってれば…」(3枚目の写真)。「ランプウィック!」。ようやく、昨晩 彼も霊薬を飲んだことを思い出す。父が「ランプウィックも人形に?」と訊く。「きっと、そうだよ。でなきゃ、ひょっとして… ロバかも」。実際は、海ロバだった。
  
  
  

ゼペットの村を離れて、次の興行地へ向かうサーカスの一行(1枚目の写真)。興行での売り物は、「驚異の人形男(The Amazing Puppet Man)」だ。興行初日から、さっそくテントの中央ステージで、「ピノキオと人形のパパ」という触れ込みで演技をさせられる2人。最初は、操り人形のように糸で吊るされた形で登場し(2枚目の写真)、団員に糸を切らせ、自立して動くところを見せるという演出だ。「踊って! 2人とも!」と命令するマダム。「やるもんか」とピノキオ。マダムは、ステージの前に炎を出し、「踊って。さもないと、父親を火に放リ込むよ」と脅す。「踊ろう、他に途はない」とピノキオに手を差し出す父。無念そうな顔のピノキオ(3枚目の写真)。仕方なく、2人で簡単なダンスを披露。ピノキオが踊っていると、辺りが急に暗くなり「ピノキオ」と呼ぶ声がする。例の青い妖精だ。だから、見えているのはピノキオだけ。「松の森の子… 魔法の薬で問題を解決しようとした 可哀想な知ったかぶり屋さん(Mr. Know-it-all)」。「でも、僕、こんなことになるなんて…」。「なすべきことを、しなかった。だから、窮地に立ってるのよ。でも、糸口はあるわ。目的を果たすには、最初に戻りなさい。真実を学ぶことで、見せかけも判るのよ」。また、謎々だ。困ったピノキオ。「最初? 見せかけ? いったい何を言ってるの?」(4枚目の写真)。すると、妖精の姿は消え、ピノキオはショーの最中に立ち尽くしている。マダムに、「踊って」と叱られる。その時、団員が引っ張ってきたロバに、父が空中1回転して飛び乗る。観客は、スタンディングオベーション。父は、自分のパフォーマンスに大満足。マダムも予想外の人気に大喜びだ。
  
  
  
  

檻の中を、鼻歌まじりに掃除している父。そこにピノキオが寄ってくる。「僕が 存在しないものを見たと言ったら、パパ、何て言う?」。「存在しないのなら、見えないだろ」。「僕、青い妖精を見たんだ。じゃあ、本物なんだね」。「青い妖精だと? こんな話が、魔法などてんで信じない現実主義の若者から出るとはな」。「彼女は誰なの、パパ?」。「青い妖精は、自然の申し子で、地上の魔法の守り手だ。だが、お伽噺にすぎん」。それだけ言うと、急に今日の大成功に話題を変える。「今夜は大成功だったな。あんなに受けるとは 思わんかった」。「どうして嬉しいの? こんなの悪夢だよ」(1枚目の写真)。「嬉しい? わしは、ここから出られるまで、不幸に負けようとしまいと努めてるだけだ」。「でも、奇跡でも起きないと…」。「奇跡なら もう起きとるだろ。お前を授かった」。「あれは別物だよ」。「どう違う。奇跡は奇跡だ」。「あれは、ハートの奇跡だった」〔ゼペットが木に彫ったハートに命が宿った〕。父が、疲れたので寝たいと言うので、檻の前のワラの上で横になるピノキオ(2枚目の写真)。さっき、青い妖精から言われたことを反芻してみるが、結局、何を言われたのか分からない。
  
  

次の町での公演。今度は、趣向を変えて、父が歌う前で、背の高い靴を履き、少し年上の少女に扮したピノキオが近寄る男性を蹴飛ばしながら ゆっくりと踊る(1枚目の写真)。ショーが終わっても、屈辱的な役にお冠のピノキオ。一方の父は、観客からのサイン攻めに喜んで応えている。「心配しなくても、みんなにサインするからね。ファンに冷たくしたら、ファンから冷たくされる。みなさんあってこその スターだから」。それを遠くから見ながら、コビトがピノキオに「君のパパ、水を得た魚だな」と言うと、「あれは演技だよ。不幸に負けまいとしてるだけ」と反論する(2枚目の写真)。「そうか? 騙されるとこだった」。しかし、父の浮かれ様は、本心からだった。今まで、他人から賞賛されたことなどないので、浮き足立ってしまったのだ。
  
  

翌日、サーカスを王家の使者が訪れ、今夜のショーを王子が観に来ると伝える。マダムにとっては願ったり叶ったりの栄誉だ。そのニュースは、父にも伝えられる。しかし、ピノキオにとっての関心事はそんなことではない。どうしても、もう一度妖精に会いたいのだ。そこで、テントの中を捜し回り、「いませんか? 妖精さん」と声をかける(1枚目の写真)。すると、3度目の青い光が輝き、テントの中で青い妖精が糸を紡いでいる(2枚目の写真)。「私に会いたい時は、心で捜しなさい。目ではなく」。「捜してるって、なぜ分かったの?」。「感じたからよ」。そして、新たな謎々を伝える。「サファイアの雫が光り輝き、真実と正義の道を示すでしょう」。困惑したピノキオ。「サファイアの雫って? まだ、『目的』と『みせかけ』で悩んでるのに… ところで、あなたは誰?」。「ピノキオ、あなたは知ってるでしょ」。「青い妖精さん?」(3枚目の写真)。ここで妖精は姿を消す。これが最後で、もう妖精は現れない。
  
  
  

ピノキオが水槽を見に行くと、窓に、変な魚が寄ってくる。タツノオトシゴとカンガルーを足して2で割ったような生き物だ。これが、海ロバ。水中だからよく分からないが「助けて」と言っているようだ。ピノキオが、ランプウィックだと気付く。「僕だよ、ピノキオだよ」。「助けて!」(1枚目の写真)。「どうなってるの?」。「食べられちゃう」。「心配するな。僕が出してやる」。そこに団員がやってきて、今夜のマダムのおかずにと、熱帯魚を1匹すくい取っていく。その様子を隠れて見ているピノキオ(2枚目の写真)。魚は、顔が子供なので、放っておけば、この子はマダムに食べられてしまう。何とか救おうと調理場に忍び込んだピノキオだが、見つかって大騒動。逃げる度にあちこちめちゃめちゃになるドタバタ劇だ。幸い、何とか魚の入ったすくい網を盗み取り(3枚目の写真)、魚を水槽に戻すことに成功する。
  
  
  

ピノキオは、すぐに父の元に走り、ランプウィックの救出を相談しようとする。しかし、父の方は、今夜の御前公演に興奮すると同時に、ちっとも姿を見せない息子にイライラを募らせている。「ピノキオ、どこへ行っとった?」。「ランプウィックが大変なんだ」。「心配ない」とすげない返事。そして、「今日、王子様の前で演じる」と言い、如何にも王子の前でするように、片膝をつき、「これは、殿下…」。それを悲しげに見ているピノキオ(1枚目の写真)。父の顔には、傲慢さと狡さが伺える(2枚目の写真)。「パパ、目を覚まして。ランプウィックは焦ってるよ」。「もちろん、そうだろう。みんな スターになりたいからな」。とても素朴なゼペットとは思えない言葉だ。「でも、パパは 人形なんだよ」。「そうだな。慣れるのに少し時間がかかったが、今は、むしろ気に入っとる。辛い痛みもないし、税金も払わなくていい。歯みがきも要らんし、風呂だって…」。「気でも狂ったの?」。「そうじゃない。わしは、天職を見つけたんだ」。その時、さっきの魚の争奪劇でひどい目に遭った団員が来たので、ピノキオは慌てて逃げて、調理場のテーブルの下に隠れる。すると、コビトが話しかけてくる。「そろそろ、おさらばする時だと思わんか?」。「たぶん」。「目を覚まして 考えてみるんだ。君のパパは、一座の人気者に安住する気だし、友達の海ロバは早晩ブイヤベースにされる。で、どうしたらいい?」。「なぜ 助けてくれるの?」。「したいのか、すべきなのかは、言葉のあやさ。だが、急がないとな。これ、覚えてるか? 『導き』と『守り』。幸運のお守りだ」と言うと、そのペンダントをピノキオの首にかけてくれる。ここまでするのは、前に書いたように、コビトが、守り手のコオロギだから。「パパは離れないかも。ここが好きなんだ」(3枚目の写真)。「じゃあ、説得しないと。ショーの前に楽屋で」。ここで、ピノキオはさっきの団員に見つかり、マダムの部屋に連行される。
  
  
  

この映画の一番の山場。マダムは、連行されて来たピノキオに対しても上機嫌だ。何せ、もうすぐ王子様が来るので。「今日はね、ピノキオ、お前は、王子様の前で 演じるんだよ。これは、ただの始まりで、すぐに、世界中の王や女王たちが、あたしのサーカスを招致したがるようになる。そして、お前はスターになるの。いかが? ピノキオ」。ピノキオは、「僕は、やらないよ、パパとランプウィックを 元に戻すまで」と素っ気なく断る。すると、マダムは間髪を入れずに、団員に訊く。「夕食は何?」。「ご要望通り、フグです」。「変えましょう。今夜 食べるのは… 海ロバよ」。「だめ!」(1枚目の写真)。「いいこと、調理には うんと時間をかけてちょうだい」。「そんな、お願い」。「小さな子は堅いから、じっくり煮込まないと」。「やるよ(I perform.)」。その返事を待っていたかのように、マダムは次の段階に入る。「お前は お利口さん。でも、それじゃ不十分。華々しくないし、御前上演には相応しくないわ。どうすればいいかしら? こんなフィナーレはどう? ゼペットを燃えさかる炎に 投げ込むの。何て壮観なの! そう思わない?」。あまりの言葉に泣き出すピノキオ。マダムは、銀杯を取り出し、ピノキオの涙を杯に受ける(2枚目の写真)。「パパのためなら、何でもする。そうよね、ピノキオちゃん?」。うなずくピノキオ。「お友達の 海ロバのためにも」。「するよ、何でも(Yes, Anything.)」。ここで、マダムが恐ろしい提案をする。「人形になるかい?」(3枚目の写真)。ピノキオは、「そしたら、パパを 人間に戻す? それに、ランプウィックも?」と訊く。究極の自己犠牲だ。「それも あり得るわね」。「でも、どうやって?」。「心の底からの涙の力は、とても強いの」。「約束は守ってよ」。「あたしが嘘をつくとでも? 嘘はつかないわ。絶対に。もちろん、約束は守りますよ。じゃあ、飲み干して。パパに対する愛情の 完璧な証明ね」。観念して一気に飲み干すピノキオ。ピノキオは、たちどころに人間から人形に戻ってしまった。
  
  
  

出演2分前なのに、ピノキオが現れず、「ピノキオはどこだ? 困った子だ!」と言っている父の前に、ピノキオが「ここだよ、パパ」と顔を見せる。人形に戻った息子を見て、驚く父。驚いたのは、ピノキオも同じだ。これでは約束が違う。「パパ、まだ人形なの?」(1枚目の写真)。「マダム・フランボウが、パパたちを人間に戻すと約束したから、僕…」。父は、それを遮るように、「戻すだと?」と訊く。「だけど、言ったろ。わしは元に戻りたくないって。でもな、こりゃあ最高だぞ。何て 凄いんだ!」。鏡に写った2人の姿を見て、「ご覧、今やわし達は 本当のコンビだ。みんなを あっと言わせてやれるぞ」(2枚目の写真)。ピノキオの気高い自己犠牲や心の葛藤などまるで無視したこの態度。最低としか言いようがない。父がステージに向かった後、残ったコビトに不満をぶつけるピノキオ。「あの女、嘘をついた。計略だったんだ」。「どうする?」。「マダム・フランボウに、一生忘れられないような人形劇を見せてやろう」。その夜の御前公演は複雑なものとなった。猫と狐が、自分たちも儲けようと、ショーの直前の舞台裏で、父をさらって別の人形にすり替え(3枚目の写真)、2人が去った後、今度はコビトが来てピノキオを袋に隠して別の人形とすり替えたのだ。こうして始まったショーは、人形が両方とも「死んで」いて動かないので、観客からは罵声が浴びせられ、王子は怒って帰ってしまう大荒れぶり。
  
  
  

ここから、話は急展開する。コビトはピノキオを馬車に乗せて、ピノキオの生まれた松の森へと向かう。ピノキオ:「僕たち どこにいるの?」。「何を寝ぼけてる」。「森の中だよね」。「普通の森じゃないだろ」。「例の、松の森?」。「ビンゴ! 出来たじゃないか!」。「じゃあ、僕、ここから来たんだ… 生まれた所… そうか、つまり… 『最初』なんだ! これだ! 謎々の答え… 『目的を果たすには、最初に戻りなさい』」。こうして第一関門を通過したピノキオ。自分が作られた木の幹を採取した場所までやって来ると、残っている切り株に上る。「僕、この木の中にいた。パパは、僕をここに放っておいてくれたら良かったんだ」(1枚目の写真)。「人間の子でいるのなんか大嫌いだ。僕はそれに値しないし… それに、パパは僕のことなんか、もう どうでもいいんだ。関心のあるのは、名声だけ」。「学校をさぼって、サーカスに行ったのと同じだろ」。一方、猫と狐から父人形を返されたマダムは、公演の最悪の失敗の責任をピノキオに負わせようと、後を追って森へと向かう。そして、切り株の上にいるピノキオを発見、ゼペットともども焚き火にくべて燃やそうとする。この復讐の裏には、興行の失敗だけでなく、夫ロレンヅィーニがピノキオ達によって殺されたことへの恨みも込められている。2人を前にして、マダムから(何故か)元の姿に戻ったロレンヅィーニは、「俺様の人生の邪魔ばかりしてきたチビ人形どもには、もう うんざりだ。はっきり言っておこう。同じ轍は踏まん」と宣告する(2枚目の写真)。2人を焼く炎が上がり、風前の灯だ。ピノキオは妖精の言葉を必死に考える。「サファイアの雫が光り輝き、真実と正義の道を示すでしょう」だ。「心で捜しなさい。目ではなく」をヒントに、最終的に、近くの岩の表面に、青く光る「サファイアの雫」を見つけ、そこにポッカリと開いた穴から、洞穴の中に転がり落ちていく。その終点にある青い水の池。そこに入った2人は、人間の姿に戻ることができた(3枚目の写真)。海ロバもランプウィックに戻れたが、ロレンヅィーニはタコのオバケに変身してしまう。
  
  
  

村に帰ったピノキオたち。今は、父が、マダムのサーカスの後を継いで、団長になっている。そのサーカスを観ようと、足早に村を歩くピノキオとランプウィック(1枚目の写真)。後ろに見える中世風の建物は、ルクセンブルクでのロケ地だが、場所は不明。2人はリモーニさんの露店に寄る。そこに1人の少女がいる。顔が、青い妖精にそっくりなので、ピノキオもどぎまぎしてしまう。おまけに、相手はピノキオの名前を知っている。ピノキオがもじもじしていると、ランプウィックが「一緒にサーカスを観に行こうよ」と誘い、少女もOKする。それを聞いて、急に嬉しそうな顔になるピノキオ(2枚目の写真)。サーカスでは、世にも恐ろしい化け物として、ロレンヅィーニが見世物にされている。2人は仲良く並んで観客席に座る。舞台では父があやつり人形のショーを見せている。「あれ、パパだよ」。「ええ、とても有名だわ」。「そうだね」。ここでも、ピノキオはニコニコ顔だ(3枚目の写真)。
  
  
  

彼女のことが気になるピノキオが、「あのね、君って似てるね」と言い出す。「誰に?」。「たいしたことじゃないけど、思い出すんだ… 昔の友達を。本当のところ、誰なのか 知らない。誰だったのかな」。「人生は謎だらけね」。「そうさ。そして、謎を解こうとする努力すれば、途は開けるんだ」。「その通りよ、魔法の薬じゃ何も解決できないもの」。その返事に、思わずピノキオは、「できない… よね」と答える(1枚目の写真)。やっぱり、この子は妖精なんだろうか? 一瞬そう考えたに違いない。その後、父のショーが最高潮を迎え、大歓声と共に終わる。例の王子も観に来ている。スタンディングアオベーションにピノキオも幸福そうだ(3枚目の写真)。
  
  
  

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